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大王誌上で紹介した一冊・書籍編

呪いの都市伝説 カシマさんを追う
松山 ひろし

アールズ出版 2004-11
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 自分が小学生の頃、ある日突然学校中が「口裂け女」なる人物の話でパニックに陥ったことがあった。整形手術に失敗して気が触れた女が、刃物で子どもの口を切り裂くために徘徊している……今でこそ「学校の怪談」系の幽霊・妖怪の類としてキャラクター化されている口裂け女だが、その時は悪意を持って子どもを襲う実在の人物として噂されたため、例えようもない恐怖を自分も含めた多くの子どもに刻みつけたのだ。だが、そんな口裂け女にはルーツが存在していたという。彼女だけではなく、多くの呪怨系都市伝説を辿った時に、必ずたどり着く存在……その名は「カシマさん」。  この本は、都市伝説研究家の筆者がインターネットを通じて多くの人から協力・情報提供を募り、30年以上も語り継がれながらその正体が未だ不明瞭な都市伝説「カシマさん」の謎に迫るドキュメンタリーだ。多くの情報から浮かび上がるカシマさんの実像は「話を聞いた者の所に現れる〝伝染する呪い〟」「四肢の欠損」といった共通項はあるものの、その姿は様々だ。太平洋戦争で亡くなった兵士の亡霊や広島の原爆によって体の半分が焼けただれた少女、またある時は踏切事故でバラバラになっても生きて助けを求めた少女や腕や足を亡くしたために絶望の果てに自殺したピアニストやバレリーナ、そして口裂け女……よく耳にする呪われた都市伝説のほとんどが「カシマさん」で繋がっていることが明らかにされるのだ。  だが、謎はさらに深まっていく。いったいカシマさんとは何者なのか? なぜカシマさんと名付けられたのか? 武芸や戦いの守護神として崇められた鹿島神宮や、石炭産業の衰退によって消えていった鹿島炭坑など、時代の波に翻弄される様々な「カシマ」へとそのルーツを探るものの、最終的な結論までには至らない。様々な形で語り継がれ、人々の心に呪いとなって住み着くカシマさんの深淵は、それだけ暗く深いものなのだと、この本は語っている。  特定の都市伝説にこだわり、その謎を解き明かそうとする意欲的なドキュメンタリーに仕上がっており、オカルト本にありがちな胡散臭さとは無縁の、読み応え満点の一冊だ。もしも「カシマさん」という名前が記憶の片にあるのなら、ぜひとも読んでみてほしい。子どもの頃に感じた恐怖を思い出すことになるかもしれませんが。
ニッポン経営者列伝 嗚呼、香ばしき人々
山本 一郎

扶桑社 2004-10-23
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 軽妙な語り口で様々な時事問題などを変わった切り口から考察。様々なメディアで人気を集める個人投資家・山本一郎氏が、週刊SPA!誌上で連載していた経営者観察コラムをまとめたのがこの一冊だ。  大王読者には経済や会社経営者の話題などは興味ないかも知れないが、プロ野球再編問題で大暴れをした読売新聞のナベツネこと渡辺恒夫や、「人の心は金で買えます」「女は金についてくる」と自著で公言してしまうライブドアのホリエモンこと堀江貴文などを見てもわかるように、今の日本や世界を動かす経営者には、生半可なマンガやアニメよりも面白いキャラクターがたくさんいるのだ。この本では、連載で取り上げた面白経営者の中から72名を厳選。大幅加筆修正も加えて良くも悪くもばっさりと切りまくっているのだ。  前述の通り、文体が軽妙で読みやすいので、経済問題などに疎いという人でも楽しく読めること確実。むしろそういう人こそが、これを読んで経済問題などに親しみを持つようになれる、最高の入門書なのだ。  文章に花を添えているのが、最近人気の格闘エンターテイメント「ハッスル」のポスター等でおなじみのイラストレーター・金子ナンペイ氏。氏が描く経営者たちの似顔絵は、ただ似ているだけでなく内に秘めたキャラクターまでもがにじみ出したような濃ゆいタッチが実に見事。読んで笑うも良し、社会人なら自分の生き方の指針にするも良しの、読み応えのある一冊だ。
同人誌バカ一代―イワえもんが残したもの
岩田 次夫

久保書店 2004-12
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同人誌を愛した男の想いがここに
 コミックマーケットに参加したことのある人なら、Dr.モローの筆によってカタログ内に描かれた、眼鏡の変なオジサンキャラ・イワえもんこと岩田次夫を知らない人はいないだろう。現在のコミックマーケットの基盤を作り、マンガに関する批評活動を様々なメディアで展開し、そして大小幾多の同人誌即売会に足を運び、ジャンルを問わずウン万冊に及ぶ同人誌を買いあさってきた愛すべき同人誌バカ…多くのマンガ・同人誌関係者に慕われながらも、昨年3月に肺ガンで逝去された氏が残した、数々のマンガ評論やパソコン通信で発表した雑文などをまとめたのがこの一冊だ。  独特の業界構造を解析しながら、当時行き詰まりを見せていた80年代半ばの少女まんが界の現状を読み解いた『少女まんがの構造』や、同人誌を創世記から見つめてきた者ならではの重みがあるコミケ&同人誌論は今読んでも古さを感じさせないし、「同人誌の書店販売」が抱える現在進行形の問題点の言及など、読み応えと問題提起、そして飽くなき愛情にあふれた内容が詰まっているのだ。  誰よりも同人誌を愛した男が残した言葉の数々……受け手・送り手問わず、マンガ・同人誌に関わる者全てが読んでおくべき一冊だ。

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