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大王誌上で紹介した一冊・萌えるコミック編

純粋!デート倶楽部―完全版 (上巻)
石田 敦子

エンターブレイン 2004-06-25
売り上げランキング : 40,588
おすすめ平均


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純粋!デート倶楽部―完全版 (下巻)
石田 敦子

エンターブレイン 2004-06-25
売り上げランキング : 45,240
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 石田敦子作品の魅力は、絵と物語の激しいギャップにあると思う。愛くるしく華やかな絵柄に惹かれてうかつに手を出すと、そこに待っているのは「マンガだから」というお約束も甘えもない、読者の心を激しく突き刺しえぐるような愛憎・トラウマ・シビアな現実の中でもがくキャラクターたちの痛々しいドラマの数々だ。なまじ絵がカワイイ分、そのシビアさの際だちぶりは他のマンガの追随を許さない程だ。
 でも、石田作品はけっして痛いだけの物語ではない。読者がキャラクターと痛みを共有するからこそ、痛々しいドラマの先に待っているハッピーエンドがこの上もなくうれしく暖かく感じられるのだ。そんな石田作品の魅力を存分に味わえるのが、3つの雑誌を渡り歩いた末に堂々の完結を果たした『純粋!デート倶楽部』なのだ。
 体に触れたりすることは一切無し。依頼者の好みのシチュエーションで、純粋にドキドキときめくだけのデートを提供する一風変わったデート倶楽部。でも、そこでときめきを与え続ける女の子達自身は、いずれも様々な理由で自分自身の「ときめき」を失っていた。そして、彼女たちは他人のときめきに触れることで、もう一度ときめく気持ちを取り戻したいと悩み続けていたのだ。そんな彼女たちが自分自身のときめきを見つけ出すドラマは、いずれも痛々しさに満ちている。だが、そこに込められているのは「痛みのない恋なんて存在しないし、痛みを乗り越えてこそ本当のときめきに出会える」というまっすぐなメッセージだ。ストレートゆえに気恥ずかしく感じるかも知れないが、それ以上に心を揺さぶられずにはいられないドラマがそこには存在しているのだ。
 恋愛を扱った作品は色々あるが、この作品は間違いなくトップクラスに位置する傑作だ。ぜひとも上下巻一気に読んで、痛みも喜びも共有しながら彼女たちの“ときめき”探しを見つめてみてほしい。きっと読み終えた時に、満足感たっぷりのため息をはけるはずだ。

天獄 (1)
うたたね ひろゆき

集英社 2004-07-16
売り上げランキング : 24,983
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 代わり映えのない日常に退屈する女子高生・透湖。だが、交通事故現場で血を集めるメイド・砂姫と体に杭を刺されたまま微笑む少年・空と出会った日を境に、彼女は平穏な日常の影で繰り広げられる、異形の闘いに少しづつ関わりはじめてしまう……。
 うたたねひろゆきがウルトラジャンプで好評連載中の、伝奇バトルファンタジー『天獄』が、いよいよ待望の単行本化だ。物語はまだ序盤のために謎が多いが、華麗なタッチで描かれる愛らしくもエロティックな女性キャラクターや、ヒロイン(?)の眼鏡っ子メイド・砂姫が繰り広げるスピーディかつ迫力満点のバトルなど、見所は満載だ。さらに1巻に登場する女性キャラ7人中5人が眼鏡っ子(単にかけさせただけでなく、ちゃんとキャラクター性に合わせた描き分けがされているこだわりぶり)という嬉しい偏りもひそかなチェックポイントだ(笑)。


30GIRL.com
岩崎 つばさ

双葉社 2004-09-28
売り上げランキング : 3,371
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「でんこちゃん」「エコアイス」などをはじめ、企業&自治体の広告キャラにマンガ風味や萌えテイストが注入されることが珍しくなくなったが、さすがに「30歳・新妻」ャラの登場にはみんなひっくり返った!
 そんなインパクト満点の注目を集めたのが、日立全自動給湯器のCMキャラ・湯神リリコさん。30歳とは思えぬキュートな容姿で人気を集めた彼女は、その後Webコミックとして動き出すわけだが、思った以上に猪突猛進系パワフルキャラだったリリコさんと、キャラの濃さではリリコさん以上の湯神家の姑&小姑や街の人々が織りなすドタバタストーリーという「平成版サザエさん・バイオレンス風味少々」といった意表を突く内容でファンを驚かせることに。そんなWebコミックが、この度めでたく単行本化と相成ったのだ。
 単行本にはマンガだけでなく、Webや広告で発表されたカラーイラストなども多数収録。こういうものはけっこう集めるのが大変なだけに、恰好の広告キャラクター資料集になっているのだ。マンガの方もまとめて読むと、Web上ではわかりにくかったキャラクターの魅力や相関関係、物語の背後に隠された壮大な(?)伏線なども理解しやすく、リリコさんをはじめとするお姉さんキャラクター達のかわいらしさもたっぷり堪能できるぞ。
 Web上での連載もますます絶好調なので、この本でリリコさんに萌えたら、Web(オイダキ.コム30GIRL.COM)もすぐにチェックすべし

ちいちゃんのおしながき(1)
大井 昌和

竹書房 2004-07-27
売り上げランキング : 6,750
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 先日大団円を迎えた、電撃コミックガオ!の『ひまわり幼稚園物語 あいこでしょ!』でおなじみ、大井昌和先生の人気4コマが待望のコミックス化だ。
 父が残した小料理屋を守るべく、10歳で板前を務めるちいちゃんと、料理オンチで飲んべえのダメママ・三葉の楽しく騒がしい日々が描かれるのだけど、これが実にほんわかかわいいのだ。特に無類のダメっぷりを見せつつもたまに母親らしさを見せてちいちゃんを支えるママの萌えキャラぶりは必見だ(笑)。
 作中に織り込まれた『あいこでしょ!』とのリンクにも注目。常連客が水商売時代の神楽坂先生だったり、『あいこでしょ!』6巻のあとがきには高校生ちいちゃん(実にナイスな育ちっぷり!)が登場したりしてるのだ。


ピピンとピント☆-宇宙へ-(1)
大石 まさる

少年画報社 2004-04-23
売り上げランキング : 25,632
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ピピンとピント☆-旅路へ-(2)
大石 まさる

少年画報社 2005-01-26
売り上げランキング : 6,788

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思春期のドキドキ満載のSFジュブナイル! 『みずいろ』『りんちゃんDIY』など、独特の元気なタッチとのびのびとした作風で人気の、大石まさる最新作は、今回も作者のやりたい放題ぶりが楽しい一本だ。  海辺の田舎町に住む、冒険と女の子に興味津々な中学生・波浜登(ピント)。そんな彼が、突然現れた同い年の叔母さん・ミナトや祖父の形見の不思議なカメラと出会ったことから始まる一夏の物語…には違いないのだが、話の節々に織り込まれる町と宇宙人との交流 など、SF物の側面も見えだし、何とも先の読めない 物語が繰り広げられるのだ。物語以外でも、作者得意 の田舎暮らしの描写や、女の子たちの明るくエッチな サービスシーンも満載で、さながら幕の内弁当のごと きにぎやかさ。  第2巻ではピントを巡る恋の行方と、故郷を離れたピントのひと夏の大冒険が繰り広げられ、こちらもシリアスな背景世界事情を見せつつも元気で楽しい物語が描かれている。今後の展開が楽しみなシリーズだ。


さくらがんばる!―完全版
中平 正彦

集英社 2004-01
売り上げランキング : 33,240
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これぞゲームコミックの最高傑作!

 ゲームのコミカライズ作品は多々あれど、マンガがゲーム本編に影響を与えてしまった作品は数少ない。その希有な例が、この『さくらがんばる!』だ。
 主人公は『ストリートファイターZERO2』で初登場した女子高生・春日野さくらだが、従来の世界観とかけ離れたキャラクターや「何故ただの女子高生が波動拳?」といった謎多き設定から、ファンの間でも賛否両論を巻き起こしたものだった。この作品の面白さは、そんなリアクションを積極的に取り込んだ点にある。ファンのツッコミのノリを盛り込みながら設定の謎を描いたり、愛すべきヘッポコキャラ・ダンを媒介にして、世田谷の女子高生とストリートファイターの世界を繋げる等の巧みな物語構成によって、ファンの視点に近い『ストリートファイター』を見事に描ききったのだ。だからこそ、コミック版オリジナルキャラのかりんがゲーム版に逆輸入なんてビッグサプライズも実現したのだろう。
 拳を交えることで成長していく女の子の青春譚としても秀逸の出来なので、たとえゲームを知らなくても読んでほしい一冊だ。値段分の価値は絶対あるはずだ。

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大王誌上で紹介した一冊・ギャグ編

かってに改蔵(26)
久米田 康冶

小学館 2004-09-17
売り上げランキング : 17,202
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伝説となった衝撃の最終回を確認せよ!
『シャーマンキング』と『代紋Take2』など、読者の予想の斜め上を行くとんでもない最終回が続出した2004年のの漫画界。そんな流れの呼び水となったのは、間違いなく『かってに改蔵』の最終回だろう。  未読の人のためにネタバレは控えるが、最後の最後で作品世界全てをひっくり返しながら、それがきちんと整合性を保ち、このラストを踏まえて今までの話を読み返した時、何気ないギャグですらまったく違った意味合いで読者を震え上がらせることになると言う「そこまでされたら何も言えません」と降伏するしかない究極の最終回だったのだ。その最終回だけでもスゴかったのに、最終巻収録の描きおろしエピソード「大蛇足」は、蛇足どころか最後のオチでキャラクターと読者に「決して終わることのないギャグマンガ世界の無間地獄」を突きつけて終わるという、一応ハッピーエンドだった最終回の余韻を自らの手で破壊する前代未聞の内容。この最終巻によって、『勝手に改蔵』はギャグマンガの歴史に残る傑作となったのだ。
 そしてもうひとつの見所は、単行本巻末で繰り広げられる、どこまでがギャグなのかわからない最終回(作者曰く「打ち切り」)にいたるまでの編集サイドとの確執ネタだ。25巻において『勝手に改蔵』が新編集長のお気に召さず打ち切りへと追い込まれていく様が書き記され、それを証明するかのように本編では色々な意味ではじけまくったエピソードが続出。そして「5週以内にアンケート3位に入らなきゃ即打ち切り決定!!」と改蔵が作中で明言し、そのリミットを過ぎた6~7回目が本当に最終回に……。あまりにタイミングがぴったりすぎるので、『改蔵』らしく最終回を盛り上げるために作者と編集部が仕掛けたシナリオなのかも知れない。でも、確執の描写の妙なリアリティや、『改蔵』終了後の週刊少年サンデーの誌面の変化を見ていると「実はガチ?」とも思えてくる。まるで昭和の新日本プロレス全盛期を彷彿とさせるような、リアルとフェイクが判別しがたい混沌状態だからこそ生まれる緊迫感が、『改蔵』を巡る内情暴露ネタには満ちあふれているのだ。  ギャグに笑い、ディープなオタネタにうなずき、作者と編集部の対立にハラハラする……『かってに改蔵』のもっとも濃厚なエッセンスが詰まった最終巻、未読の人もこれを機会にラスト2巻だけでも読んでみてほしい(もちろん他の巻も面白いから読んでソンはないぞ)。


無敵鉄姫スピンちゃん
大 亜門

集英社 2004-09-03
売り上げランキング : 61,291
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ネタの嵐にどこまでついてこられるか!?
 週刊少年ジャンプの魅力のひとつに、正統派の作品に混じって時々とんでもない異形の才能が飛び出してくるという点がある。この『スピンちゃん』も、そんなとんでもなさを感じさせた一作だ。
 エロいご奉仕をしてくれる美少女ロボット開発に執念を燃やす老マッドサイエンティストと、そんな彼を冷たく見下す孫娘(眼鏡ッ子女子高生だが、萌えのカケラもないキャラ造形がある意味クール)、そして主人公の美幼女ロボ・スピンが巻き起こす騒動の数々を描いたコメディなのだけど、注目すべきは話の節々に織り込まれた“パロディネタ”の数々だ。
『ジョジョ』『スラムダンク』『マリみて』『デスノート』といった自社ネタは当たり前。さらにはスピンの目から発射されるビームが「コミックビーム」(エンターブレイン)、消防署員の名前が恵野大五郎(『め組の大吾』)、『スーパーロボット大戦』系のネーミング等々の他社ネタまで、隙さえあればネタ投入と言った勢い。そのおかげで、異様な濃ゆさと無闇なパワーを産みだしているのだ。惜しむらくは、そういった勢いをオリジナルギャグマンガとしての魅力にうまく繋げてジャンプ読者メイン層にアピールできず、連載自体は11週打ち切りとなってしまったことだろう。
 だが、大王読者にはかなり肌の合う面白さをもった作品であるし、先日発表された読み切り作品『伝説のヒロイヤルシティ』では、オリジナルとパロディネタのバランスも絶妙なものとなり、ギャグマンガとしてのクオリティは格段にアップしていた。近い将来、ジャンプ系ギャグマンガの中核を担うであろう新鋭の原点を知るためにも、この初コミックスは絶対読んでおきたい一冊だ。

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大王誌上で紹介した一冊・じっくり読みたいコミック編

金魚屋古書店(1)
芳崎 せいむ

小学館 2004-12-24
売り上げランキング : 3,240
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「なんで自分は漫画を読んでいるんだろう?」

 改めて考えてみて、はっきりとした答えを出せる人は意外と少ないんじゃないだろうか? そしてその理由もきっと千差万別だろう。でもただひとつ確かなことは、漫画が「楽しさ」と自分の人生を豊かにしてくれる「何か」を与えてくれるものだということだろう。そんな数多くの漫画と人との関わり合いを描くのがこの作品だ。
『この店に来れば必ず探している漫画に出会える』……漫画好きの間でそう語り継がれ愛される、伝説の古本屋「金魚屋古書店」。その店を切り盛りする店長代理の菜月と、店に居候する稀代の漫画ばか・斯波を通して、様々な人たちが想い出の漫画と出会い、自分の心に大切な何かを取り戻していく優しいドラマが描かれていくのだ。
 そんなドラマと並んで注目なのが、劇中に登場する全ての漫画が実在の作品ばかりだということだ。著作権にまつわるギスギスした話の多い昨今、この作品が持つ「漫画への深い愛情」が出版社や権利関係の垣根を越えさせて、幾多の名作が彩る珠玉のエピソードを産みだしているのだ。特に今巻収録エピソードの中では、同窓会で集まったかつての級友達が、一冊の単行本『Dr.スランプ』をきっかけに思い出の数々を蘇らせていく第1話『思い出の成分』と、四十前の専業主婦が、かつて夢中になった傑作ラブストーリー『千津美と藤臣君』シリーズ(ひかわきょうこ作・白泉社刊)とひょんなきっかけで再会し、女子高生時代のときめいた日々を取り戻していく第6話『藤臣君』が個人的なオススメだ。 これを読んで「もっと読んでみたい」と思ったら、同時発売された『金魚屋古書店出納帳』上巻下巻も一緒に買うといい。一昨年休刊したOUR’s LITE(少年画報社刊)等で連載・単行本化されていたエピソードを装丁を統一してまとめたもので、堅物な父親が欠かさず買い続けていた漫画『別冊ゴルゴ13』の唯一欠けた一冊にまつわる父と息子の物語など、こちらも珠玉のエピソードぞろいだ。
 あなたが大なり小なり漫画への愛情を秘めているなら、絶対にこの本を読むべきだ。そして読み終えた時、きっとあなたは今まで以上に漫画を読みたくなっているはずだ。


毎日かあさん カニ母編
西原 理恵子

毎日新聞社 2004-03
売り上げランキング : 1,710
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無頼と笑いと感動満載の子育て日記

 かつて産経新聞に、「マッドサイエンティストのメガネくんがアレするマンガ」でおなじみの永野のりこが育児漫画が連載したのには驚かされたが、“あの”西原理恵子が毎日新聞で“育児漫画”を連載と聞かされた時の驚きはそれを遙かに越えたものだった(笑)。
 サイバラ漫画の魅力は、何と言っても様々な人々の本音や生身の部分を、時には暴力的なまでに面白可笑しく、そして優しく描きこむ点に尽きる。『毎日かあさん』は、10コマ前後のわずかなネタの中にその両方がみっちりと詰め込まれている。ひたすらバカ丸出しに描かれる子供たちがふとした瞬間に見せる確かな成長。エッセイ系漫画では無敵の暴れっぷりのサイバラが、子供たち相手では母親となって怒ったり喜んだり……単行本の最後を〆る「何度うまれかわっても、おかあちゃんがいいや」という台詞に何かを感じたなら、ぜひ手にとってみてほしい。絶対読んで良かったと思うはずだ。


ナポレオン獅子の時代(1)
長谷川 哲也

少年画報社 2003-10-24
売り上げランキング : 44,374
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ナポレオン獅子の時代(2)
長谷川 哲也

少年画報社 2004-06-28
売り上げランキング : 39,846
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ナポレオン獅子の時代(3)
長谷川 哲也

少年画報社 2005-02-10
売り上げランキング : 4,719

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『余の辞書に不可能の文字はない』  ナポレオンについて知っているのはこの言葉ぐらいという人が多いけど、このマンガは先入観のないそんな人ほど楽しめるんじゃなかろうか。フランス皇帝という肩書きからは想像もつかない無骨な振る舞いや、従者と共に立ち小便をかます豪快ぶりを見せつつも、自ら事細かに立案した作戦で16万人の兵士を見事に操ってみせる戦神ぶりを見せつけるなど、今作のナポレオンは何ともパワフルな漢っぷり全開のキャラなのだ。  物語はナポレオンの戦争芸術を描いたアウイテルリッツ戦の後は過去へと戻る。ナポレオンの生い立ちを辿りながらフランス革命を描くのだが、革命の重要人物たちも実に燃える漢ぞろい(石黒一押しは「私は童貞だ」の素敵台詞が最高なロベス・ピエール)。さらに、歴史の節目に知らず知らず関わっていくオリジナルキャラ・ビクトルのダメ男ぶりも必見。彼の足跡を追うのも、このマンガの楽しみの一つなのだ。  激動の歴史の中で吼える漢達の生きざまを存分に味わえるこの作品。歴史に興味のない人でも楽しめる事請け合いの注目シリーズだ。

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大王誌上で紹介した一冊・書籍編

呪いの都市伝説 カシマさんを追う
松山 ひろし

アールズ出版 2004-11
売り上げランキング : 30,394
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 自分が小学生の頃、ある日突然学校中が「口裂け女」なる人物の話でパニックに陥ったことがあった。整形手術に失敗して気が触れた女が、刃物で子どもの口を切り裂くために徘徊している……今でこそ「学校の怪談」系の幽霊・妖怪の類としてキャラクター化されている口裂け女だが、その時は悪意を持って子どもを襲う実在の人物として噂されたため、例えようもない恐怖を自分も含めた多くの子どもに刻みつけたのだ。だが、そんな口裂け女にはルーツが存在していたという。彼女だけではなく、多くの呪怨系都市伝説を辿った時に、必ずたどり着く存在……その名は「カシマさん」。  この本は、都市伝説研究家の筆者がインターネットを通じて多くの人から協力・情報提供を募り、30年以上も語り継がれながらその正体が未だ不明瞭な都市伝説「カシマさん」の謎に迫るドキュメンタリーだ。多くの情報から浮かび上がるカシマさんの実像は「話を聞いた者の所に現れる〝伝染する呪い〟」「四肢の欠損」といった共通項はあるものの、その姿は様々だ。太平洋戦争で亡くなった兵士の亡霊や広島の原爆によって体の半分が焼けただれた少女、またある時は踏切事故でバラバラになっても生きて助けを求めた少女や腕や足を亡くしたために絶望の果てに自殺したピアニストやバレリーナ、そして口裂け女……よく耳にする呪われた都市伝説のほとんどが「カシマさん」で繋がっていることが明らかにされるのだ。  だが、謎はさらに深まっていく。いったいカシマさんとは何者なのか? なぜカシマさんと名付けられたのか? 武芸や戦いの守護神として崇められた鹿島神宮や、石炭産業の衰退によって消えていった鹿島炭坑など、時代の波に翻弄される様々な「カシマ」へとそのルーツを探るものの、最終的な結論までには至らない。様々な形で語り継がれ、人々の心に呪いとなって住み着くカシマさんの深淵は、それだけ暗く深いものなのだと、この本は語っている。  特定の都市伝説にこだわり、その謎を解き明かそうとする意欲的なドキュメンタリーに仕上がっており、オカルト本にありがちな胡散臭さとは無縁の、読み応え満点の一冊だ。もしも「カシマさん」という名前が記憶の片にあるのなら、ぜひとも読んでみてほしい。子どもの頃に感じた恐怖を思い出すことになるかもしれませんが。
ニッポン経営者列伝 嗚呼、香ばしき人々
山本 一郎

扶桑社 2004-10-23
売り上げランキング : 3,135
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 軽妙な語り口で様々な時事問題などを変わった切り口から考察。様々なメディアで人気を集める個人投資家・山本一郎氏が、週刊SPA!誌上で連載していた経営者観察コラムをまとめたのがこの一冊だ。  大王読者には経済や会社経営者の話題などは興味ないかも知れないが、プロ野球再編問題で大暴れをした読売新聞のナベツネこと渡辺恒夫や、「人の心は金で買えます」「女は金についてくる」と自著で公言してしまうライブドアのホリエモンこと堀江貴文などを見てもわかるように、今の日本や世界を動かす経営者には、生半可なマンガやアニメよりも面白いキャラクターがたくさんいるのだ。この本では、連載で取り上げた面白経営者の中から72名を厳選。大幅加筆修正も加えて良くも悪くもばっさりと切りまくっているのだ。  前述の通り、文体が軽妙で読みやすいので、経済問題などに疎いという人でも楽しく読めること確実。むしろそういう人こそが、これを読んで経済問題などに親しみを持つようになれる、最高の入門書なのだ。  文章に花を添えているのが、最近人気の格闘エンターテイメント「ハッスル」のポスター等でおなじみのイラストレーター・金子ナンペイ氏。氏が描く経営者たちの似顔絵は、ただ似ているだけでなく内に秘めたキャラクターまでもがにじみ出したような濃ゆいタッチが実に見事。読んで笑うも良し、社会人なら自分の生き方の指針にするも良しの、読み応えのある一冊だ。
同人誌バカ一代―イワえもんが残したもの
岩田 次夫

久保書店 2004-12
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同人誌を愛した男の想いがここに
 コミックマーケットに参加したことのある人なら、Dr.モローの筆によってカタログ内に描かれた、眼鏡の変なオジサンキャラ・イワえもんこと岩田次夫を知らない人はいないだろう。現在のコミックマーケットの基盤を作り、マンガに関する批評活動を様々なメディアで展開し、そして大小幾多の同人誌即売会に足を運び、ジャンルを問わずウン万冊に及ぶ同人誌を買いあさってきた愛すべき同人誌バカ…多くのマンガ・同人誌関係者に慕われながらも、昨年3月に肺ガンで逝去された氏が残した、数々のマンガ評論やパソコン通信で発表した雑文などをまとめたのがこの一冊だ。  独特の業界構造を解析しながら、当時行き詰まりを見せていた80年代半ばの少女まんが界の現状を読み解いた『少女まんがの構造』や、同人誌を創世記から見つめてきた者ならではの重みがあるコミケ&同人誌論は今読んでも古さを感じさせないし、「同人誌の書店販売」が抱える現在進行形の問題点の言及など、読み応えと問題提起、そして飽くなき愛情にあふれた内容が詰まっているのだ。  誰よりも同人誌を愛した男が残した言葉の数々……受け手・送り手問わず、マンガ・同人誌に関わる者全てが読んでおくべき一冊だ。

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栗橋伸祐作品カタログ

 確かなタッチの描線と構成力に定評のある、実力派作家・栗橋伸祐。その最近の代表作となっているのが、秋葉原を舞台とした一連の『まにぃ』シリーズです。

●『まにぃロード』全3巻
 男気あふれる骨太のオタク・武藤武蔵(むとうたけぞう)が、美人三姉妹が切り盛りする潰れかけた電器店を「夢のオタクショップ」として再生していく姿を描いた熱血コメディ。ホビー関係に造形の深い栗橋氏ならでは濃ゆいネタの数々(特にウォーターラインモデル関係のネタは必見)や、オタクに対する世間の偏見に真っ向から異を唱えるたけぞうの主張など、「オタクとはかくあるべし」という生き様を学ぶ教科書的な側面も併せ持っているのも大きな特徴だ。
 物語的な見所としては、実質的ヒロインである次女・青葉。一般人のオタクに対する偏見を具現化したような存在だった彼女が、たけぞうを初めとする様々なオタクと接していくことで偏見を解いて変わっていく姿が、このシリーズの裏テーマでもあるのだ。
「オタクは世間とどう向き合うべきなのか?」が問われることが多い昨今、これを読んで自分のオタク道を再確認してみるのもいいかもしれない。

まにぃロード(1)
栗橋 伸祐

メディアワークス 2002-01
売り上げランキング : 56,237
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まにぃロード(2)
栗橋 伸祐

メディアワークス 2002-09-27
売り上げランキング : 56,235

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まにぃロード(3)
栗橋 伸祐

メディアワークス 2003-05
売り上げランキング : 56,234

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●『ぷりてぃまにぃず』1~2巻
『まにぃロード』終盤に登場し、人気を博したたけぞうの妹・武藤信濃を主人公に据えた新シリーズがコレ。
 女の子ながらも兄に負けない熱いオタク魂を持つ信濃が廃部寸前の漫研の部長となり、隠れオタクの気丈なお嬢様・由良や、ちょっと気弱な眼鏡ッ子先輩・千早を巻き込んで奮闘していく姿を描く、オタク少女の熱血青春ストーリー。マニアックなネタ自体が物語の柱となっていた『まにぃロード』から趣を変えて、オタク趣味にコンプレックスを感じていた女の子たちが、信濃というエネルギーに触れることで胸を張ってがんばっていくキャラクタードラマがメイン。オタク的なものに対する知識が薄くても「女の子青春物」として楽しめる仕上がりとなっているので、そっち系の作品が好きな人にもオススメだ。
 残念ながら連載の方は2月21日発売の電撃大王で最終回。最終巻は5月末発売予定となっています。

ぷりてぃまにいず(1)
栗橋 伸祐

メディアワークス 2004-02-27
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ぷりてぃまにいず(2)
栗橋 伸祐

メディアワークス 2004-10-27
売り上げランキング : 43,909
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