2009年の『ウマ娘』? 『優駿乙女 サラブレドール』を読んでみた
■TVアニメ第1期をきっかけに『ウマ娘 プリティーダービー』にハマった頃、色々な競馬関係の参考文献などを漁っていたのですが、その時に知ったマンガ作品……それが『優駿乙女 サラブレドール』。原作があかほりさとる氏で、後に氏のTwitterで「パチンコ企画だったものがリーマンショックの余波で会社が潰れて立ち消え、アニメ化を狙ってコミカライズ企画を先行させるも打ち切り」「実は『セイバーマリオネット』と同じ世界の話という裏設定が」というエピソードも明かされ、読んでみたいとは思ったものの電子書籍化もされておらず古本でもなかなか見かけず……そんな同作をやっと入手できたので読んでみました。
■連載&コミックス化が2009年ということで、今読むと当時の主流だったオタク系美少女モノのノリがいささかキツイなあと思うところも多いですが、アンドロイドという設定もあってか美少女モノへの競馬要素の落とし込み方がかなり大胆に攻めていて、その部分がかなり面白いのですわ。そのあたりを中心にピックアップしてみると……。
身体能力を司る「動力ギア」とレース能力を司る「走行プログラム」を、それぞれの母親から継承するという形で、競走馬の血統要素を取り込んでいるのは上手い設定だなと。こういう形で「血統」があるということは……。
当然血統的に魅力が無いとデビューすら叶わない場合も。セレクトセールで売買されて、売れなければメカなので廃棄処分とか、設定的にはかなりエグい一面も…『サラブレドール』に登場するドールは、特にモデルの競走馬を思わせるような描写は無いのだけど、このキャラ・ユメノヒナギクは「魅力の薄い血統」「安く買われる」「追い込みタイプ」「ど根性キャラ」ということで、何となくタマモクロスを彷彿とさせたり(タマモクロスが活躍するまで、父・シービークロスの種牡馬としての評価は「代金は酒二升」と言われるくらい低かったとのこと)
「新馬戦」「未勝利戦」の設定もあり、勝ち星を上げられないと地方への移籍や最悪処分もと、ここでもメカならではの容赦ない待遇の設定が…。
実際の競馬で騎手が騎乗馬に入れるムチ、『ウマ娘』ではオミットされましたが『サラブレドール』ではスピードアップ要素として取り入れられてます。事前にトレーナーからムチを入れてもらってチャージするのかと思えば、
レース中に自分でムチを入れて加速するというパターンもあるようですが、アニメにしていたらかなりシュールなビジュアルになりそだなと(^_^;)
■そして競馬にも『ウマ娘』にもない独自要素も色々と。
この作品が『セイバーマリオネット』と同じ世界という裏設定からすると、そちらでの「乙女回路」にあたるのが「サラブレイン」。『ウマ娘』で言うところの「ウマソウル」に近いですが、サラブレッドの本能と人間の少女としての心を併せ持たせ、サラブレドールとしての個性を形作っていると。このあたりが、後ほど紹介するラスボスとのレースにも繋がっていくのですが。
そして一番の独自要素は「レース中に武器での攻撃がOK」ということかと。あくまでもレース戦略の補助なので、走りのスタイルに合わせて武装だったり強化パーツを2つまで使用可能……いや「差し」がミサイル攻撃というのはいささか納得しかねるが(^_^;) あと先ほど紹介したムチは強化パーツ扱いなのかは不明。何となく標準装備な気もしますが。
そして『サラブレドール』にも登場するのが「三大始祖」。メイドロボを走らせて競うゲームから始まり、レース専用にカスタムされたメイドロボとして劇中には名前がでませんが「ゴドルフィンバルブ」「バイアリーターク」「ダーレーアラビアン」が誕生したと。
作中のラスボスとして登場するのはそんな三大始祖のレプリカで、サラブレインの全容量をレース用に割り振っているので無感情かつ最強なのだけど……という彼女との対決で作品としては完結しています。
■あかほり氏のツイートにもあるように、コミック版『サラブレドール』の人気は余り伸びずにテレビアニメ化も実現しなかったとのこと。
2009年あたりの競馬はどんな状況だったのかを調べてみると、ダイワスカーレットとウオッカが引退し、ブエナビスタがクラシックで牝馬三冠を目指している時期。そしてJRAの売得金額・総参加人員(PDF)のデータを見てみると、オグリキャップが火を付けた競馬ブームがナリタブライアンの活躍で頂点に達し、スペシャルウィークら「黄金世代」が活躍した1998年あたりを境に緩やかに下降線を辿り始めている。そしてその底を着いたあたりがリーマンショックによる世界不況のあった2008~2010年なのだ。
不況に加えて競馬界的にもスターが不在時期、そしてオタク界隈に競馬が浸透していたとは言い難い時期だっただけに、オリジナルキャラクターでの美少女競馬モノという企画が埋もれてしまったのも仕方なかったのではないか。
そう考えると、賛否はあれど実在競走馬の擬人化で「オタク」と「競馬」を接続して、どちらにも楽しさと利をもたらした『ウマ娘』のアプローチは正解だったのだろう。
そして、もしも『優駿乙女 サラブレドール』のパチンコやテレビアニメが2009年に実現していたら、はたして2016年に『ウマ娘 プリティーダービー』は現在のような形で存在し得たのか、そもそも誕生していたのか? そう考えると『優駿乙女 サラブレドール』は特異点といえる作品だったのかもしれない。
■なんか理屈っぽいシメになってしまいましたが、何だかんだで楽しめる作品ですので、古本屋などで見つけたらぜひ手に取ってみることをオススメします(Amazonで検索するといくつか見つかりますが、送料込みの値段を考えると…ということで、AAは貼りません(^_^;)















































