最近のお仕事&【ブックレビュー】『男のチャーハン道』
現在発売中のモノマガジン最新号にて、フィットネス特集「モノマガ人の体再起動!」を中心に12ページほど書かせていただいております。最近は新規仕事の開拓などに追われてスポーツクラブをすっかりさぼっていたのですが、この仕事を期にトレーニング再開。特集内のブックレビューでとりあげた本のトレーニングを実践して、効果があるかどうか試してみたり……結果が出たら報告しますね(^_^;)
■男の一人暮らしなこともあり、食生活は趣味と実益も兼ねて自炊がメインなのですが、そんな生活の参考になりそうな面白い本があったので、購入&読了。
「炒め物の基本であるチャーハンすらまともに作れないやつは、料理人失格だ!」
「鍋の中でイジイジかき回してるだけじゃ、本当のチャーハンは出来ないんだよ!」(『美味しんぼ』「直火の威力」より)
今でこそ色々言われがちな『美味しんぼ』だけど、連載序盤に繰り広げられた食の薀蓄の数々が織りなすドラマは、それまでのグルメマンガにはない鮮烈なインパクトに満ちていて、一般世間の食に対する考え方にすら多大な影響を与える革命的なマンガだった。そんな代表的にエピソードのひとつが、チャーハンを取り上げた「直火の威力」だった。パラリとした食感のチャーハンを仕上げるコツは、強力な火力と鍋をあおって飯粒を直火で炙ってよけいな油を飛ばすことだと山岡士郎は語っていたのだけど、それじゃ中華料理店並みの火力が無い家庭用コンロでは美味しいパラパラチャーハンは作れないだろうのか?
この本は『美味しんぼ』の同エピソードにトラウマを背負わされた筆者が、調理法/道具/素材などの様々な要素を徹底的に検証しながら「家庭で作れるパラパラチャーハン」のレシピを完成させるというもの。『美味しんぼ』で語られた火力問題については「実際にチャーハンを作る際にはどれほどの火力=温度があれば必要十分なのか」を計測と調理を重ねて実証。チャーハンを炒めるのは中華鍋以外ではどうなのか? 『ゆるキャン△』で人気のスキレットとかは高温を保てるからチャーハン向きなのでは? さらにネットで話題になった『がらくたストリート』における油を大量に使ったチャーハン調理法を検証してチャーハンに最適な油の量はどのくらいか? そしてチャーハンを作る際に使うご飯は本当に冷やご飯が良いのか? 等々、トライ&エラーの積み重ねで理想のチャーハンレシピを確定させていく過程が、ある意味文字で読むグルメマンガのようなテイストで面白いのだ。
さらに過去の有名なチャーハンレシピを遡っていくことで意外な食文化の歴史が見えてくるのも面白い。そもそも粘度の高い日本の米自体がチャーハンに向かないことや、かつて政府が行っていた米輸入規制がパラパラチャーハンレシピを生み出したのではという考察や、ご飯を溶き卵に絡めて炒めたりする「卵コーティング」技法が90年代になって突然現れた理由の推理など、日本人の食に対する意識の変化がもたらした様々な影響をチャーハンを軸に考察していく部分も、グルメ薀蓄好きには楽しく読めると思う。
自分もこの本の影響で中華鍋を購入(^_^;) 空焼きなどの準備を終えてから、本のレシピを参考にしたチャーハン作りにチャレンジ。
とはいえすべてをレシピ通りにしたわけではなく、「卵は黄身のみ使用」とあった部分は白身の処理が面倒だったので全卵の溶き卵を使用するなど自己流に。一方で「中華鍋を使用」「ご飯は炊飯器で5時間ほど保温したものを使用」「ネギは粗みじん切りで仕上げの30秒前に」という部分は取り入れてみました。
レシピに従うのも良いけど、ある程度自炊馴れして自分のスタイルがある人は使えそうな部分を取り込んで自分流チャーハンのレベルアップに活かすという読み方もありかと。パラパラチャーハンが至高と言われがちだけど、ちょっとしっとりめの日本流「焼きめし」が好きな人もいるわけですしね。
誰もが一度は作ったことがあるであろうチャーハンだけに、作るからには美味しく仕上げたいと思うもの。この本は間違いなくその助けとなるし、これから自炊を始めようという人にも最適なテキストとなるはずなので、興味のある人はぜひご一読を。