小山田いく先生のご冥福をお祈りいたします
■先週の頭に闘病中だった母を看取り、葬儀などの慌ただしさに押し流されながらも何とか納骨まで終えて、ショックと哀しみも和らいできた所でしたが、本日個人的には大変ショッキングな訃報が。
最近の若い漫画ファンでは知らない人も多いと思いますが、1980年代の脂の乗りきっていた週刊少年チャンピオンにおいて、独特の可愛らしい絵柄と瑞々しい学園青春ストーリーを多数送り出し、多くのファンを魅了した人気作家さんなのです。この一報が流れた後のTwitterを見て、多くの著名人や漫画家さんがこの訃報を取り上げてコメントを残していたことからも、その影響力の大きさはわかると思います。とにかく80年代に少年マンガを読んでいた人なら、知らない人はまずいなかったのではないかと。
■自分も中学1年生の頃に小山田いく先生の「すくらっぷ・ブック」に出会い、自分と同世代の晴ボンやマッキーに心奪われて、少ない小遣いをやりくりしながら少年チャンピオンとコミックスを買い集めるようになりました。それが糸口となった漫画そのものにもはまり、小山田いくネタの投稿目当てにふぁんろーどを購読しはじめ、そこに掲載されていた小山田いくファンクラブ「小山田軍団」の会員募集を目にして、同人誌作りに目覚めたり、同好の友人達と交流するようになり、出版業界で仕事をするようになり……ある意味小山田いく先生とその作品に出会ったからこそ、今の自分があると言っても過言ではありません。自分の人生における心の師匠とも言うべき存在でした。それだけに、59歳という早過ぎる死が本当に悲しいです。
■改めて小山田いく先生の作品を振り返ってみると、単なる青春物にとどまらない先進性があったことに気づかされます。
・主人公達のクラス全員30数名のキャラクターがきっちりと設定され(小山田先生の中学時代のクラスメートがモデル)、そんなクラスメート達にもスポットをあてることで繋がり重なっていく人間関係が織りなす学園群像劇。
・先生ご自身が住まわれていた長野県小諸市を舞台とし、実在する土地の風景が物語のリアリティを深めていく聖地巡礼要素。
・同時期に「バラの進様」「るんるんカンパニー」を連載していたとり・みきをはじめ、同期の連載陣と作中に楽屋落ちネタを織り交ぜてギャグにしていくクロスオーバー要素(回数こそ少ないが、あの手塚治虫まで絡んできたことも)。
今の漫画・アニメなどにも受け継がれているこれらの手法は、80年代前半にはほとんど見られなかったもの。こういった手法の斬新さがあったからこそ、当時中学生だった自分が「この漫画は何かが違う」と感じとり、小山田いく作品を追い続けていくことになったのだと思います。
■漫画編集者になったからには、いつかは小山田先生に原稿依頼をしてみたい……そんな夢を密かに秘めていましたが、それもとうとう叶わぬ夢となってしまいました。でも、今の自分を形作ってくれた多彩な作品に出会わせてくれた事を、今でも感謝しております。心よりご冥福をお祈りいたします。
■小山田いく先生の作品は現在だと復刊ドットコムで選集を購入可能ですので、興味のある人はぜひ読んでみて下さい。おすすめはやはり最初の連載にして代表作の「すくらっぷ・ブック」です。
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