『掟上今日子の備忘録』読了
■今月発売号関係のワークも終わり、本屋をのぞくと素敵眼鏡っ子が表紙の新刊が。眼鏡っ子が素晴らしい作品にハズレ無しという世界の真理に従って購入したのが……。
西尾維新
1250円+税
■あらゆる事件に巻き込まれ、その都度犯人として疑われる不遇の青年・隠盾厄介。そんな体質ゆえに、常に携帯の電話帳には様々な「探偵」の連絡先が書き込まれている彼が、もっとも頼りにしているのが、忘却探偵・掟上今日子。記憶が一日しか保たない(寝て起きると全てを忘れる)ゆえに、依頼を受けた事件はほぼ一日で解決する彼女と、彼女にほのかな想いを抱きつつも、合う都度忘れられることに悲しい思いをするハメになる厄介が遭遇する奇妙な事件と、それにともなう優しい物語が描かれるのが本作。
■「記憶が保たない」ハンデを背負いながら事件に挑むという設定だけだと、クリストファー・ノーランの映画『メメント』を思い出す人は多いけど、必死に記憶にすがりながら事件に挑む『メメント』とは逆に、「忘れる」ことを探偵としての武器にし、それを独自のヒロイン性につなげるあたりは、さすが西尾維新という感じで面白い。そして何より、厄介の視点で語られる今日子さんの可愛らしさが実に甘酸っぱい感じでいいのですよ。ミステリの皮を被った恋愛小説とでもいうべき一篇かと。
■とはいいつつも、随所に「探偵小説」らしさが色々盛り込まれているのもツボでした。特に読んでいると誰もが気になるであろうある一点について、最後の最後で「そうきたかー」と思わせるオチがつくあたりはやられました。確かにこれは探偵小説の「王道」。
■あと注目ポイントは装丁でしょうか。本文ページやカバーを取ると露わになる「備忘録」というコンセプトを盛り込んだ装丁は、やはりリアルの本じゃないと味わえないかと。作者初の電子書籍版でも別の仕掛けがあるかも知れないけど、やはり個人的には紙の本で楽しみたい一作かと。何はともあれ、今日子さんが実に魅力あふれる眼鏡ヒロインなので、眼鏡クラスタなら是が非でも読むべき新刊だと思いますよ!