ドラクエⅨは思った以上にハードかもしれない
■仕事や夏コミの準備の支障になるだろうから、しばらく買うまいと思っていた『ドラゴンクエストⅨ』……でも、発売日当日にアキバヨドバシに行ってしまったのが運の尽き。ついついゲットしてしまい、予想通りにはまりまくりです(^_^;)
やめ時を見いだすのが難しい絶妙のゲームバランス、『ドラゴンクエストⅢ』を思い出させる仲間キャラメイク、グラフィックも合わせて変わるので、組み合わせの試行錯誤が楽しい装備のコーディネートなどなど、仕事がなければ延々とプレイし続けかねない要素が盛りだくさんで、やっぱりドラクエはいいなあと浸りきってます。ROMゆえの読み込みの早さとフタの開け閉めだけでレジューム可能なDSをプラットフォームにしているという点が、さらにハマリ度を高めまくっている感もありますね。
■そんな具合に楽しみまくっている『ドラゴンクエストⅨ』なんですが、ここ両日になってやたらとネットでバッシングされたり、アマゾンのレビューで★1個で叩かれまくりというのがニュースになったりと、妙な流れに。まあ様子をうかがう限りゲハ厨ノリのアンチが暴れているだけみたいな感じなので、個人的にはあきれつつも無視する方向ですが。
ただ、そんな中で気になったのが、NPCであるガングロ妖精・サンディに対する反発。確かに好き嫌いが分かれすぎるキャラクターだとは思うのですが、サンディを叩く理由の一つとしてあげられているゲーム序盤のとあるイベントについては、色々と思うところがあるんですよね。以下はネタバレ要素も多少あるので、ダーマ神殿到着後の大イベント二つ目までクリアしていない人はスルーしてください。
■今回の『ドラクエⅨ』のシナリオですが、ビジュアル的なかわいらしさとは裏腹に相当にシビアな内容なんですよね。人間の業に関わる様な暗い部分にもかなり容赦なく迫っているというか。
自分の夢を追うあまりに愛する人と故郷を失い、自分が得るはずだった愛する人との故郷での暮らしを彫刻で再現して、喪失感を埋めようとしながら死んでいく老彫刻家。
祈りで村に魚をもたらしてくれる少女に頼り切って堕落していく漁村。
自分のことしか考えず、他者との関わりを切り捨て続けたがために、愛する妻の体調にも気づかずに疫病で死に至らしめてしまう若き学者。
彫刻家のエピソードはもの悲しい中にも狂気すら感じるし、先に進んでいる人の話を聞く限り、さらに踏み込んだイベントも用意されているというから、かなり楽しみです。
■サンディに対するバッシングの原因ともなっている、疫病イベントでの学者の妻の死に対するドライなコメントなのだけど、実は自分はそれをさほどひどいとは思わなかった。むしろ、なんの救済措置も無しにあっさりと死なせてしまったシナリオ自体にビックリしたというか。いままでのドラクエだったら「疫病の原因となっている呪いのために仮死状態に→原因を取り除いて無事に生き返る」という方向に持っていっただろうし(サンディの「何死んでるの?」「こうなったらお礼もらわなくちゃやってられない」というセリフは、ある意味イベントに直面したプレイヤーの驚きをそのまま言葉にしたものなのかもしれない)。あと、この切り取り方自体が叩く意図だけが見え見えの恣意的なものなのも引っかかる(※)。詳しくは後述するが、イベント前後の状況やその後のキャラクターの言動などもふまえないと、サンディというキャラクターの正当な評価にはならないと思うのだが。 でも、サンディのリアクションをひどいと思わなかった理由は別にある。それは前述の「人間の業に踏み込んだシナリオ」にも関連することだけど、人間以外の種族の人間観がコンシューマRPGとしては驚く程にドライなのだ。主人公の出自となる「天使」にしても、彼らが人間を助けるのはあくまで「自分たちが神々の世界へと行くためにこなさなければならない義務・試練」としか思っていない。天使界のマップを回って会話していると、程度の差こそあれど「自分たちが助けてやらなければならない哀れな種族」と認識しているし、人間を愛してその世界に身を置く天使を禁忌・異端として扱ったり(これは違っている可能性もあるけど、現時点でのゲーム内情報ではそう感じる)。天使界を襲った異変が人間界にもたらした災害にしてもさほど気にしていないし、ダーマ神殿後のメイン目的である「果実」の回収にしても「自分たち(天使界)が助かるため」なのだ。
天使からしてそれなのだし、彼らがあがめる「神」にしても一度を見限り滅ぼそうとした描写さえある。天使や神がそうなのだから、その従属種族にあたるであろう妖精のサンディが、疫病イベントで人の死に対して無頓着なのも頷ける。そもそも彼女が主人公を人助けへと駆り立てる動機自体が、自分の目的を果たすためには主人公に天使の力を取り戻させるためにすぎないのだから。そう考えると、あのガングロ女子高生を模したデザインも「人の姿をしていながらも理解しがたい異種族」ということを強調する意図があったのではと思えてくる……これは考え過ぎかもしれないけど。
■でも、そんな数々のドライな設定もゲームの進行とともに変化していく。人間を見下す天使に属する主人公は、翼と天使の輪を失い、人間であるプレイヤーと一体化することで、人間の弱さや業を目の当たりにしながらも人のために戦い動いていく。そして人の死にドライに対応したサンディも、彫刻家のイベントでは人間の心の不思議さに触れて、人間に対する感情に変化の兆しを見せ始める。あらかじめ設定の決まっている主人公を操る、物語体験ツール的なRPGと異なり、『ドラゴンクエスト』シリーズの主人公はプレイヤー自身だ。シナリオこそ定められているが、それをプレイヤーがどう感じ捉えていくかで物語自体の印象は変わっていく。それは『ドラクエⅨ』でも変わっていないだけに、ある意味人間を見下すところからスタートする今作は、そのかわいらしいイメージとは裏腹にハードな印象を与えるものなのかもしれない。
でも、そんな厳しい物語だからこそ、まっこうから向き合って判断すべきじゃないだろうか。mixiニュース日記などの反応を見ていると、自分で確かめもせずに炎上気味にヒートアップするネットやアマゾンレビューのバッシングだけで「やっぱりクソゲーらしい」とジャッジをくだす反応のあまりの多さに驚きとともに軽い目眩すら感じる。リスクを避けたいという気持ちも分かるけど、『ドラゴンクエスト』に関しては得るもののほうがはるかに大きいゲームなのだから、風評だけでスルーするのはもったいないと思う。
※煽りやアクセス数稼ぎのために、誤解を招くようなネタバレ引用をするというパターンがここ最近やたらと目立つ気がする。個人的に一番あきれたのは、『ARIA』最終回1話前のアリシアが灯里をウンディーネに昇格させなかった理由に関してでしたが。
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