意外に楽しめた『DRAGONBALL EVOLUTION』と、楽しかったが故に惜しかった『ヤッターマン』ーー最新コミック映画雑感
■先週は『ヤッターマン』、今週は『DRAGONBALL EVOLUTION』と、奇しくも日米双方で作られた日本アニメ&コミックの実写映画が公開ということで、どちらもしっかり初日に観させていただきました。雑誌やネットでは色々と記事や批評家の意見が出てはいるけど、やっぱりこういうのは自分で観て確かめないことには評価できませんし。
『DRAGONBALL EVOLUTION』(3/13新宿バルト9にて)
■色々と不安があったのは確かなので、金券ショップにて1250円のチケットを購入して鑑賞。
ネットやマスコミ媒体などでは、いささかネガキャン気味に取り上げられている感もあるこの映画だけど(普段は「マスゴミは信用できない」とか言ってるオタ系ニュースサイトが、こういう時は記事を信用して「観なくて正解だな」とか言っちゃってるのには苦笑しますが)、結論からいえば「意外とおもしろかった」です。正規の一般料金で観ていたら不満たらたらだったかもしれませんが(^_^;)、安売りチケットや割引デーを利用して安く観られるなら時間分はきっちり楽しめるし、友達と連れだって笑ってツッコミいれつつ観て、鑑賞後にはファミレスとかで笑いながらツッコミまくって盛り上がれる……同じ回を観ていたグループ客が言っていた「みんなでニコニコできる映画だなw」という評価が一番的を射ているかもしれません。
■作品的に言うなら、この映画版は「スーパー戦隊」シリーズに対する「パワーレンジャー」シリーズといった立ち位置なのかも。日本の『ドラゴンボール』という素材を、アメリカンな視点で再構築して生まれた亜種というか。
時同じくして、東映版『スパイダーマン』がアメリカのマーベル公式サイトで配信スタートし、海外のファンが色々な意味でツッコミどころ満載のスパイダーマンに良くも悪くも混乱しながら楽しんでいる様子。日本の観客も、この『DRAGONBALL EVOLUTION』に関しては、「こんなの違う!」と怒るんじゃなく、東映スパイダーマン同様にツッコミ物件として楽しむのが一番正しいんじゃないかと。『へうげもの』的に言うなら「むしろそれが面白いのだろうと」というところか。
■上記のようなことを感じたのも、ひとえに映像から「まじめに『ドラゴンボール』を作ろうとしている」ことが伝わってくるからなんですよね(完成したものの出来や内容が、そのまじめさと比例しているかは別ですが)。
「マンガの実写映像化」ということから、日本のテレビドラマにありがちな原作レイプのイメージを『DRAGONBALL EVOLUTION』に抱いてしまっている人も多いようだけど、実際に仕上がった映像には、そういった面はほとんどありませんでした。
悟空の設定が「18歳の高校生」「女の子に興味があるけど、力を隠しているために学校ではヘタレ扱い」という点を問題視している人が多いけど、パンフレットの解説記事でも指摘されていたように、これって人造人間~セル編の頃の悟飯をモチーフにしているのではないかと。鳥山明版『西遊記』のカラーが強かったスタート時と、アニメで言うところの『Z』編的なバトル展開をミックスして90分の枠に収めるために、悟飯をベースにして作られたのが『DRAGONBALL EVOLUTION』版の悟空と考えれば、むしろ原作リスペクトなんじゃないかと(まあ、序盤の学園展開はあちらの学園物のフォーマットにはまりすぎなのが難なのですが。でも、原作でもあそこらへんの悟飯やビーデルの絡みは、アメリカ学園物になぞらえていたので、ある意味正しいのか?)。
■もちろん映画としては色々とツッコミどころは多いですし、観ていて「えー?」思うところも多々あるし(事前情報を全く入れてなかったので、あのチチとヤムチャには本気で吹いたw)、お世辞にも傑作だなんて言う気はありませんが、けっしてつまらない映画じゃないことは確か。作品を観るというより、お祭りに参加するようなノリで見に行くのが、『DRAGONBALL EVOLUTION』に一番ぴったりの楽しみ方なんじゃないかと。
■あと、『DRAGONBALL EVOLUTION』を見に行く上で一番重要なのは……字幕版を見に行くのが吉ということですか。別に吹き替え版の出来が悪いというわけではないのですが、字幕版だと英語の台詞の中に「カメハメハー」「マフーバー(魔封波)」「キー(気)」「オオザル(大猿)」と日本語そのままの固有名詞が混じりまくる奇妙な味わいが楽しめないので。『キル・ビル part1』の「ヤッチマイナー」「キリタイネジュミガイルカラ」的なアレっぷりが最高なんですよw
『ヤッターマン』(3/7 MOVIX宇都宮にて)
■『DRAGONBALL EVOLUTION』が「意外に楽しめた」のとは逆に、面白かったがゆえに「惜しいなあ」と思うところが色々あったのが『ヤッターマン』。こちらもすごいマジメに「あえてヤッターマンを実写でやるとしたら」という命題にきっちりと取り組んでいるのが、観ていてよくわかるんですよ。
■作品の世界観そのものともいえる山本正之の曲もちゃんと使ってるし、色々な意味で不安だった深田恭子のドロンジョも、ちゃんと小原乃梨子のセリフのイントネーションを取り込んでいるし、隙さえあれば様々なくだらない(むろんいい意味で)ネタを仕込んできたタイムボカンシリーズのノリそのままに、画面のあちこちには後でソフトで確認しないとわからないような小ネタが満載。
ヤッターワンでの海外への移動を真っ向から描いてみたり、三池テイストが爆発した感のある、トラウマ級の怖さと不気味さ全開のドクロベー(冒頭の怨霊(?)版はデザインの勝利、そしてクライマックスは阿部サダヲの怪演がすべて持っていってしまった気が)&エログロインパクトがハンパじゃない「全国の女子高生の皆さん」等々、まさに実写で描く『タイムボカン』シリーズとしか言いようのない、パワフルな映像のオンパレードでした。
■でも、それゆえに「追いついていない」部分が際立ってしまったというか。その最たるものがヤッターマンVSドロンボーの生身でのバトルシーン。キャラクターやそれぞれの武器描写をしっかり見せようとしてるのか、どうもテンポが少し間延びしてたというか。あそこまで合成とCGを多用して描くのだったら、さらにいじりまくって原典のようにアップテンポでガンガン畳みかける映像にした方が、ハイスパートなネタ乱れ撃ち感が出て良かったんじゃないかなと。映画の映像そのままで1.5倍速再生すれば、ちょうと良かったような気。
前述の深田ドロンジョにしても、前述の台詞のニュアンスコピーなどで元のキャラクターを生かしつつ、深田ならではの可愛さを加味したオリジナルドロンジョ像をいい感じで見せてくれてるのですが、ちょい役で登場した小原乃梨子のオリジンボイスを披露したとたん、地声の力強さが段違いだとわかってしまって、深田ドロンジョボイスがいささか色あせてしまうことに(地声の力さえ備わっていれば、深田ドロンジョはかなりいけていたということの証明でもあるのですが)。
■自分と同様に両作品を観た映像制作関係者は、「どちらもマジメに作りすぎ」という感想を漏らしていました。これは「手を抜け」とかいう意味ではなく、肩に力が入りすぎて原作の魅力でもあるゆる~い部分を映像に活かせなかったのではないかということ。特に『ヤッターマン』(というか『タイムボカン』シリーズ)は、作品としての整合性よりも「面白ければそれでいい」というノリ優先のいい加減さが、あれだけの長期シリーズ化へとつながった面がありますし。実際に劇場で最後まで観た人ならわかると思いますが、もしも次回作があるのなら、物語的には力が抜けつつも映像自体はパワフルな『ヤッターマン』が観たいかなと。
■あと余談ですが、パンフレットは資料性がかなり高い充実した内容なので、800円という値段を気にせず買っておいた方がいいかと。
『DRAGONBALL EVOLUTION』(3/13新宿バルト9にて)
■色々と不安があったのは確かなので、金券ショップにて1250円のチケットを購入して鑑賞。
ネットやマスコミ媒体などでは、いささかネガキャン気味に取り上げられている感もあるこの映画だけど(普段は「マスゴミは信用できない」とか言ってるオタ系ニュースサイトが、こういう時は記事を信用して「観なくて正解だな」とか言っちゃってるのには苦笑しますが)、結論からいえば「意外とおもしろかった」です。正規の一般料金で観ていたら不満たらたらだったかもしれませんが(^_^;)、安売りチケットや割引デーを利用して安く観られるなら時間分はきっちり楽しめるし、友達と連れだって笑ってツッコミいれつつ観て、鑑賞後にはファミレスとかで笑いながらツッコミまくって盛り上がれる……同じ回を観ていたグループ客が言っていた「みんなでニコニコできる映画だなw」という評価が一番的を射ているかもしれません。
■作品的に言うなら、この映画版は「スーパー戦隊」シリーズに対する「パワーレンジャー」シリーズといった立ち位置なのかも。日本の『ドラゴンボール』という素材を、アメリカンな視点で再構築して生まれた亜種というか。
時同じくして、東映版『スパイダーマン』がアメリカのマーベル公式サイトで配信スタートし、海外のファンが色々な意味でツッコミどころ満載のスパイダーマンに良くも悪くも混乱しながら楽しんでいる様子。日本の観客も、この『DRAGONBALL EVOLUTION』に関しては、「こんなの違う!」と怒るんじゃなく、東映スパイダーマン同様にツッコミ物件として楽しむのが一番正しいんじゃないかと。『へうげもの』的に言うなら「むしろそれが面白いのだろうと」というところか。
■上記のようなことを感じたのも、ひとえに映像から「まじめに『ドラゴンボール』を作ろうとしている」ことが伝わってくるからなんですよね(完成したものの出来や内容が、そのまじめさと比例しているかは別ですが)。
「マンガの実写映像化」ということから、日本のテレビドラマにありがちな原作レイプのイメージを『DRAGONBALL EVOLUTION』に抱いてしまっている人も多いようだけど、実際に仕上がった映像には、そういった面はほとんどありませんでした。
悟空の設定が「18歳の高校生」「女の子に興味があるけど、力を隠しているために学校ではヘタレ扱い」という点を問題視している人が多いけど、パンフレットの解説記事でも指摘されていたように、これって人造人間~セル編の頃の悟飯をモチーフにしているのではないかと。鳥山明版『西遊記』のカラーが強かったスタート時と、アニメで言うところの『Z』編的なバトル展開をミックスして90分の枠に収めるために、悟飯をベースにして作られたのが『DRAGONBALL EVOLUTION』版の悟空と考えれば、むしろ原作リスペクトなんじゃないかと(まあ、序盤の学園展開はあちらの学園物のフォーマットにはまりすぎなのが難なのですが。でも、原作でもあそこらへんの悟飯やビーデルの絡みは、アメリカ学園物になぞらえていたので、ある意味正しいのか?)。
■もちろん映画としては色々とツッコミどころは多いですし、観ていて「えー?」思うところも多々あるし(事前情報を全く入れてなかったので、あのチチとヤムチャには本気で吹いたw)、お世辞にも傑作だなんて言う気はありませんが、けっしてつまらない映画じゃないことは確か。作品を観るというより、お祭りに参加するようなノリで見に行くのが、『DRAGONBALL EVOLUTION』に一番ぴったりの楽しみ方なんじゃないかと。
■あと、『DRAGONBALL EVOLUTION』を見に行く上で一番重要なのは……字幕版を見に行くのが吉ということですか。別に吹き替え版の出来が悪いというわけではないのですが、字幕版だと英語の台詞の中に「カメハメハー」「マフーバー(魔封波)」「キー(気)」「オオザル(大猿)」と日本語そのままの固有名詞が混じりまくる奇妙な味わいが楽しめないので。『キル・ビル part1』の「ヤッチマイナー」「キリタイネジュミガイルカラ」的なアレっぷりが最高なんですよw
『ヤッターマン』(3/7 MOVIX宇都宮にて)
■『DRAGONBALL EVOLUTION』が「意外に楽しめた」のとは逆に、面白かったがゆえに「惜しいなあ」と思うところが色々あったのが『ヤッターマン』。こちらもすごいマジメに「あえてヤッターマンを実写でやるとしたら」という命題にきっちりと取り組んでいるのが、観ていてよくわかるんですよ。
■作品の世界観そのものともいえる山本正之の曲もちゃんと使ってるし、色々な意味で不安だった深田恭子のドロンジョも、ちゃんと小原乃梨子のセリフのイントネーションを取り込んでいるし、隙さえあれば様々なくだらない(むろんいい意味で)ネタを仕込んできたタイムボカンシリーズのノリそのままに、画面のあちこちには後でソフトで確認しないとわからないような小ネタが満載。
ヤッターワンでの海外への移動を真っ向から描いてみたり、三池テイストが爆発した感のある、トラウマ級の怖さと不気味さ全開のドクロベー(冒頭の怨霊(?)版はデザインの勝利、そしてクライマックスは阿部サダヲの怪演がすべて持っていってしまった気が)&エログロインパクトがハンパじゃない「全国の女子高生の皆さん」等々、まさに実写で描く『タイムボカン』シリーズとしか言いようのない、パワフルな映像のオンパレードでした。
■でも、それゆえに「追いついていない」部分が際立ってしまったというか。その最たるものがヤッターマンVSドロンボーの生身でのバトルシーン。キャラクターやそれぞれの武器描写をしっかり見せようとしてるのか、どうもテンポが少し間延びしてたというか。あそこまで合成とCGを多用して描くのだったら、さらにいじりまくって原典のようにアップテンポでガンガン畳みかける映像にした方が、ハイスパートなネタ乱れ撃ち感が出て良かったんじゃないかなと。映画の映像そのままで1.5倍速再生すれば、ちょうと良かったような気。
前述の深田ドロンジョにしても、前述の台詞のニュアンスコピーなどで元のキャラクターを生かしつつ、深田ならではの可愛さを加味したオリジナルドロンジョ像をいい感じで見せてくれてるのですが、ちょい役で登場した小原乃梨子のオリジンボイスを披露したとたん、地声の力強さが段違いだとわかってしまって、深田ドロンジョボイスがいささか色あせてしまうことに(地声の力さえ備わっていれば、深田ドロンジョはかなりいけていたということの証明でもあるのですが)。
■自分と同様に両作品を観た映像制作関係者は、「どちらもマジメに作りすぎ」という感想を漏らしていました。これは「手を抜け」とかいう意味ではなく、肩に力が入りすぎて原作の魅力でもあるゆる~い部分を映像に活かせなかったのではないかということ。特に『ヤッターマン』(というか『タイムボカン』シリーズ)は、作品としての整合性よりも「面白ければそれでいい」というノリ優先のいい加減さが、あれだけの長期シリーズ化へとつながった面がありますし。実際に劇場で最後まで観た人ならわかると思いますが、もしも次回作があるのなら、物語的には力が抜けつつも映像自体はパワフルな『ヤッターマン』が観たいかなと。
■あと余談ですが、パンフレットは資料性がかなり高い充実した内容なので、800円という値段を気にせず買っておいた方がいいかと。
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