なんで日本はマンガの実写映画/ドラマ化が苦手なのか……と、韓国映画『アンティーク 西洋骨董洋菓子店』の前売り券を買ってふと思う
■新宿駅の架線工事でJRの足が大混乱の中、母からの頼まれものを買うために仕事前に恵比寿ガーデンプレイスへ。何を買うかと言えば、恵比寿ガーデンシネマで今日から売り出しの韓国映画『アンティーク 西洋骨董洋菓子店』(ゴールデンウィーク公開)のポスター付き前売り券w
■原作は言わずとしれた、よしながふみの人気コミック。そして今回の映画版は見ての通り韓流映画なわけですが、ビジュアルや事前情報を見聞きする時点ですでに、同原作の映像化としては一番の仕上がりになる予感が。
アニメとしてあまりにもダメすぎたノイタミネ版は論外だし、時間帯的な都合でゲイ要素をカット・脚色したフジTVドラマ版は出来はいいけど文句無しとまでは言い難い。その点で行くと、今度の映画版は舞台やキャラクターを韓国に置き換えていることをのぞけば、原作のテーマやエッセンスを忠実にやろうとしているようだし、メインの4人もかなり原作のイメージにあったイケメン役者をそろえたりと、かなりの本気ぶりが伝わってくる。これはちょっと、自分も公開時には見に行こうかなと考えていたり。
■今回の『アンティーク』映画化や、母のつきあいで半ば強制的に見ることとなってる新旧韓流ドラマ、さらには欧米系の海外ドラマを色々見ていて思うのだけど、なんで欧米やアジアではマンガ原作&SF&ヒーローものといったマンガ的なドラマ&映画が普通に定着し、ブームを起こす様なヒット作だって生まれているのに、何で日本ではそういう流れが根付かないんだろうか? 原因はたぶん、海外はどんな題材でも全力でドラマ化しようとしているけど、日本はそうではないということだ。
日本におけるマンガ原作系ドラマ&映画を振り返ってみると、駄作比率がかなり多い(たまに『デトロイト・メタル・シティ』のような傑作も誕生するけど)。その理由として思いつくのは、演じる側・作る側・企画する側のいずれにも拭い難く存在する、マンガなどに対するテレや蔑みだ。マンガやアニメが「日本を代表する文化」と言われるようにはなっているが、それでも「しょせんは子供のもので幼稚」的な認識が多くの日本人の根底に存在している。未だにオタク関係のネガティブなニュースが流れると「オタクに対する偏見だ」と反応する人が多いのも、そういう意識の存在を認識しているがゆえだろう(でも、一部のオタクによる非常識な言動がニュースを誘発するという側面もあるので、すべてが偏見ともいえませんが)。
そんな意識があるから、役者や作り手も「たかがマンガのドラマなんて」と全力で取り組まない。当然、出来はそれなりのものとなり、一般視聴者には「いまいち」と評され、原作ファンからはブーイングをくらって、何も残さず消えていってしまうのだ。
あとは日本はなまじアニメが発展しているからという面もある。わざわざドラマでやらなくても、アニメという確固たる市場を持った映像ジャンルがあるのだから、ドラマ製作側には「アニメでやればいいのに、何でわざわざ」的な受け取り方をされているのかもしれない。うがった見方をすれば、日本におけるマンガ原作ドラマは、現場からは「アニメの二軍扱いな企画」と受け取られているのかもしれない。
■一方の海外ではどうだろう。欧米物では、いわゆるマンガ的な題材を扱ったドラマも多数あり、人気の度合いはまちまちなれど、ドラマとしての映像クオリティはどれも及第点かそれ以上のものが多い。
アジア圏では出来こそ玉石混交なれど、日本のマンガを原作としたドラマは数多く、社会現象的な人気を生み出す作品も多い。日本でも最近ドラマ版がブレイクした『花より男子』にしても、ドラマ化のきっかけになったのは台湾ドラマ版のアジア圏での人大気によるところが大きい。他界した作者・多田かおるの未発表草稿を元に、アニメで物語を完結させるということで話題となった『イタズラなKISS』にしても、台湾版ドラマが年間最高視聴率を記録し、台湾オリジナルの続編まで作られるほどの人気を博しているぐらいだ。
どちらにも共通していえるのは、作り手側にマンガ原作に対する偏見がないことではないだろうか。「ドラマの素材」という点では他のオリジナル企画と何ら変わらないということで、役者も制作側もオリジナルのドラマと同じように力を注いで作る。だから普通のドラマと同等かそれ以上のクオリティにもなるし、傑作も生まれるのだ。
「じゃあ、ハリウッド版ドラゴンボールとかは?」と言う人もいるだろうが、あれは国民性などに起因する原作のとらえ方の感覚の違いが大きいのだと思う。「しょせんマンガ」と手を抜かずにがんばったはいいが、それがあさっての方向だったがゆえに、原作に馴れ親しんだ日本人から見るとすごいことになっちゃってるということではないだろうか。ハリウッド版がアレな出来になりそうだからといって、日本で実写版ドラゴンボールを作ったら素晴らしいものができるのかと考えてみると…なまじ原作を忠実にトレースしようとして、ハリウッド版とは別の意味でアレなものが仕上がりそうな気がするし…。
■「しょせん韓流なんて、代理店に乗せられたオバサン連中が騒いでるだけ」と言う人が多いとは思うけど、前述のように新旧韓流ドラマを見まくってしまっていると、えらい勢いで新作のクオリティが上がってきているのがわかるんですよ。恋愛絡みの描写などは『冬ソナ』あたりからあまり代わり映えしないけど、それ以外の部分に関しては日本を追い抜きつつあるところさえあるというか(日本のドラマの方が停滞しているという見方もあるかと)。
映画ではすでに韓流ノワールがジャンルとして定着しているし、第二次大戦時の大陸を舞台にしたイ・ビョンホンの新作ウエスタン『良いやつ、悪いやつ、変なやつ』なんて韓流云々抜きにしてもアクション映画として面白そうですし(旧日本軍が悪役扱いだから、日本公開予定がないというのはマジなんかねえ)、こういったジャンルではすでに邦画は太刀打ちできなくなりつつある感じが……。
■テレビでも映画でも、ここ最近の韓流物は「日本とハリウッドのいいとこ取り」といった感じで垢抜けて伸びつつある。『アンティーク』はそんな土壌で作られた本気のマンガ原作物ということになるんだろう。その出来映え如何では、日本のドラマや邦画もうかうかしてはいられない状況になっていくかも。
実写以外でも、アジア圏のクリエイト分野はどんどん侮りがたくなっているのを、最近現場にいて強く感じる様になってきてます。粗悪の代名詞みたいに言われていた韓国・中国のアニメ作画も近年はどんどんクオリティが上がっているし、マンガ関係でも日本の描き手に劣らない萌え絵を描ける子が出てきたり(某企画で知らずにイラスト発注して、マジでびっくりしましたわ)、アニメやマンガも次第に日本の専売特許じゃ無くなりつつあるんですよね。積み上げてきたアドバンテージにあぐらをかいて、アジア圏と言えば「パクリ」「テコンV」程度の認識で侮っていると、近い将来には痛い目に遭いそうな気さえします……そんなことにならないよう作り手側に関わる者は、気を引き締めないといけないなと、グダグダと考えたりした今日でした。
■原作は言わずとしれた、よしながふみの人気コミック。そして今回の映画版は見ての通り韓流映画なわけですが、ビジュアルや事前情報を見聞きする時点ですでに、同原作の映像化としては一番の仕上がりになる予感が。
アニメとしてあまりにもダメすぎたノイタミネ版は論外だし、時間帯的な都合でゲイ要素をカット・脚色したフジTVドラマ版は出来はいいけど文句無しとまでは言い難い。その点で行くと、今度の映画版は舞台やキャラクターを韓国に置き換えていることをのぞけば、原作のテーマやエッセンスを忠実にやろうとしているようだし、メインの4人もかなり原作のイメージにあったイケメン役者をそろえたりと、かなりの本気ぶりが伝わってくる。これはちょっと、自分も公開時には見に行こうかなと考えていたり。
■今回の『アンティーク』映画化や、母のつきあいで半ば強制的に見ることとなってる新旧韓流ドラマ、さらには欧米系の海外ドラマを色々見ていて思うのだけど、なんで欧米やアジアではマンガ原作&SF&ヒーローものといったマンガ的なドラマ&映画が普通に定着し、ブームを起こす様なヒット作だって生まれているのに、何で日本ではそういう流れが根付かないんだろうか? 原因はたぶん、海外はどんな題材でも全力でドラマ化しようとしているけど、日本はそうではないということだ。
日本におけるマンガ原作系ドラマ&映画を振り返ってみると、駄作比率がかなり多い(たまに『デトロイト・メタル・シティ』のような傑作も誕生するけど)。その理由として思いつくのは、演じる側・作る側・企画する側のいずれにも拭い難く存在する、マンガなどに対するテレや蔑みだ。マンガやアニメが「日本を代表する文化」と言われるようにはなっているが、それでも「しょせんは子供のもので幼稚」的な認識が多くの日本人の根底に存在している。未だにオタク関係のネガティブなニュースが流れると「オタクに対する偏見だ」と反応する人が多いのも、そういう意識の存在を認識しているがゆえだろう(でも、一部のオタクによる非常識な言動がニュースを誘発するという側面もあるので、すべてが偏見ともいえませんが)。
そんな意識があるから、役者や作り手も「たかがマンガのドラマなんて」と全力で取り組まない。当然、出来はそれなりのものとなり、一般視聴者には「いまいち」と評され、原作ファンからはブーイングをくらって、何も残さず消えていってしまうのだ。
あとは日本はなまじアニメが発展しているからという面もある。わざわざドラマでやらなくても、アニメという確固たる市場を持った映像ジャンルがあるのだから、ドラマ製作側には「アニメでやればいいのに、何でわざわざ」的な受け取り方をされているのかもしれない。うがった見方をすれば、日本におけるマンガ原作ドラマは、現場からは「アニメの二軍扱いな企画」と受け取られているのかもしれない。
■一方の海外ではどうだろう。欧米物では、いわゆるマンガ的な題材を扱ったドラマも多数あり、人気の度合いはまちまちなれど、ドラマとしての映像クオリティはどれも及第点かそれ以上のものが多い。
アジア圏では出来こそ玉石混交なれど、日本のマンガを原作としたドラマは数多く、社会現象的な人気を生み出す作品も多い。日本でも最近ドラマ版がブレイクした『花より男子』にしても、ドラマ化のきっかけになったのは台湾ドラマ版のアジア圏での人大気によるところが大きい。他界した作者・多田かおるの未発表草稿を元に、アニメで物語を完結させるということで話題となった『イタズラなKISS』にしても、台湾版ドラマが年間最高視聴率を記録し、台湾オリジナルの続編まで作られるほどの人気を博しているぐらいだ。
どちらにも共通していえるのは、作り手側にマンガ原作に対する偏見がないことではないだろうか。「ドラマの素材」という点では他のオリジナル企画と何ら変わらないということで、役者も制作側もオリジナルのドラマと同じように力を注いで作る。だから普通のドラマと同等かそれ以上のクオリティにもなるし、傑作も生まれるのだ。
「じゃあ、ハリウッド版ドラゴンボールとかは?」と言う人もいるだろうが、あれは国民性などに起因する原作のとらえ方の感覚の違いが大きいのだと思う。「しょせんマンガ」と手を抜かずにがんばったはいいが、それがあさっての方向だったがゆえに、原作に馴れ親しんだ日本人から見るとすごいことになっちゃってるということではないだろうか。ハリウッド版がアレな出来になりそうだからといって、日本で実写版ドラゴンボールを作ったら素晴らしいものができるのかと考えてみると…なまじ原作を忠実にトレースしようとして、ハリウッド版とは別の意味でアレなものが仕上がりそうな気がするし…。
■「しょせん韓流なんて、代理店に乗せられたオバサン連中が騒いでるだけ」と言う人が多いとは思うけど、前述のように新旧韓流ドラマを見まくってしまっていると、えらい勢いで新作のクオリティが上がってきているのがわかるんですよ。恋愛絡みの描写などは『冬ソナ』あたりからあまり代わり映えしないけど、それ以外の部分に関しては日本を追い抜きつつあるところさえあるというか(日本のドラマの方が停滞しているという見方もあるかと)。
映画ではすでに韓流ノワールがジャンルとして定着しているし、第二次大戦時の大陸を舞台にしたイ・ビョンホンの新作ウエスタン『良いやつ、悪いやつ、変なやつ』なんて韓流云々抜きにしてもアクション映画として面白そうですし(旧日本軍が悪役扱いだから、日本公開予定がないというのはマジなんかねえ)、こういったジャンルではすでに邦画は太刀打ちできなくなりつつある感じが……。
■テレビでも映画でも、ここ最近の韓流物は「日本とハリウッドのいいとこ取り」といった感じで垢抜けて伸びつつある。『アンティーク』はそんな土壌で作られた本気のマンガ原作物ということになるんだろう。その出来映え如何では、日本のドラマや邦画もうかうかしてはいられない状況になっていくかも。
実写以外でも、アジア圏のクリエイト分野はどんどん侮りがたくなっているのを、最近現場にいて強く感じる様になってきてます。粗悪の代名詞みたいに言われていた韓国・中国のアニメ作画も近年はどんどんクオリティが上がっているし、マンガ関係でも日本の描き手に劣らない萌え絵を描ける子が出てきたり(某企画で知らずにイラスト発注して、マジでびっくりしましたわ)、アニメやマンガも次第に日本の専売特許じゃ無くなりつつあるんですよね。積み上げてきたアドバンテージにあぐらをかいて、アジア圏と言えば「パクリ」「テコンV」程度の認識で侮っていると、近い将来には痛い目に遭いそうな気さえします……そんなことにならないよう作り手側に関わる者は、気を引き締めないといけないなと、グダグダと考えたりした今日でした。
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