『オタクに未来はあるのか!?』を読む
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オタクに未来はあるのか!?―「巨大循環経済」の住人たちへ 森永卓郎・岡田斗司夫 PHP研究所 |
近年のオタク作品やオタク自体への言及には「違うだろ!」と色々突っ込みたい部分が多いオタキングだけど、オタクコミュニティから一歩引いて「社会の中においてオタクはどういう立ち位置にいるのか(世間にどう捉えられているのか)?」的な状況分析に関しては、面白いし納得させられる意見が多いんですよね。ここらへんはオタ系ニュースサイトやブログ、そして東浩紀系のオタク論者が「オタクに入れ込みすぎる(もしくは当事者である)がゆえに」見落としがちな部分でもあるわけで。そこらへんの人の中には「岡田や唐沢の言うことなんて、第一世代が自分たちをあがめてほしくて言ってるだけの妄言だ」と切り捨てる人もいるけど、オタクについて何か考えるのであれば、見落とすことのできない思考材料のひとつだと思うのですよ。だからこそ、何だかんだ言っても興味深い題材の時には本を買っているわけで。
今回の本は、そのタイトルや森永卓郎との共著(対談本)であることから察しがつくように、「オタク市場・経済」に的を絞って、その市場の仕組みと抱える問題点に迫るというなかなか面白い内容。
・『電波男』の中で「ほんだシステム」として語られた、オタクな作り手とオタクな消費者の間で金が循環していく「閉鎖的循環型市場」の弱点。
・「萌え」とは恋愛の精進料理である。
・これからの萌えビジネスの勝利の鍵は「恋人」ではなく「妻」を与えること。
・オタクは急速に「下流の趣味」になりつつあることを認識すべし。
読んでて気になったキーワードをいくつか抜き出してみたけど、過去から現在へのオタクビジネスの変化や、これから成功するためのキーポイントなどがあちこちにちりばめられていて、編集という仕事柄「なるほどなー」と思わされる部分も多かったです。
経済ネタとは言っても、小難しい専門用語はあまりないですし、語りの上手い二人による対談なので文章も読みやすいので、オタクビジネスに興味のある人は読んで損のない一冊かと。
まあ、ひとつ気になったのは、この手の話題で必ず出てくる村上隆に対する評価ですか。この本では「オタク市場に新たな人と資金を呼び込む貴重な人材」と高く評価してるのだけど、あまりフィードバックされてない気がするんですが(^_^;)。あと、オタクが村上隆を嫌うのは「オタクは金に関して潔癖なので、村上隆はオタクを金儲けに利用しているように見えるのだろう」とも書いているのだけど、それ以上に「巨乳や射精など恥ずかしい題材を「これがオタクのアートだ!」としてアピールされることの痛さ(ワイドショーで奇矯な振る舞いのオタクが「これがオタクだ」と広められる感覚に近いかも)」「オタクが作品の重要な評価要素としている「熱気」「情熱」が村上のオタクネタ作品からは感じられない(同人誌に例えるなら「今回はこれが売れ線だから」という意図が見え見えなエロ同人誌みたいなものか)」という部分も大きいと思うんだけど。