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「今」という時代が生んだルパンの再生……『ルパン三世 GREEN VS RED』

■ここ最近はテレビスペシャルとして新作が放映されている『ルパン三世』だけど、クオリティ的に突き抜けてなかったり、なまじキャラが定着しているゆえに冒険ができないことの弊害か、アニメファンの話題に上ることがなくなってしまった気がする。

■そんな時に思い出すのが、押井守監督による劇場版『ルパン三世』のこと。かなり昔のアニメージュにコンセプトのみが発表されたのだけど、「ルパン三世は人々の共同幻想が産み出した幻」「ルパン三世という虚構を探してさまよう銭形警部」というプロットゆえに、企画が立ち消えになってしまったとか。まあ、けっこうな押井シンパだった自分でも「これは面白いかもしれないけど、オフィシャルでやるのは無理だろう」と思ったぐらいなので、企画がぽしゃったのも当然かと。
 でも、こういうプロットになった理由について、押井監督はこんなことを語っていたと記憶している……

「現代社会に怪盗(=ルパン三世)が存在する余地はない。それでも存在させるとしたら、こういうアプローチしかない」

 映画『立喰師列伝』も、立喰師という怪しい存在が社会の変化と共に消えていく課程を描いていたけど、社会が怪しげな存在を拒絶し排除していく現代日本では、『ルパン三世』という存在のリアリズムは無くなってしまっているのかも知れない。

■何で今になってこんなことを書いているのかというと、発売から一ヶ月遅れで見た『ルパン三世』40周年記念OVA『GREEN VS RED』に、幻の押井ルパンの残り香を感じて、ちょっとヒートアップしてしまったせいw。

 別に押井作品系統のスタッフがいるわけでも、所謂押井カラーっぽいものがでているわけでもない。でも、前述の「押井ルパン」が『ルパン三世』のフォーマットを崩さず、そのコンセプトを活かす形で歩み寄っていたら、ひょっとしてこんな作品になる可能性もあったんじゃなかったのかと。

■舞台はリアルタイムの現代日本。ルパン三世は表舞台から姿を消して世捨て人状態で、次元・五右衛門・不二子らファミリーもバラバラ。それゆえに銭形警部も精彩を欠いている様子……みんな「怪盗」の存在を許容しない現代からはじき出されているのだ。
 そんな世間を騒がせているのは、伝説のルパン三世に憧れスタイルのみを模倣し、様々な悪事を繰り広げる有象無象のニセルパンばかり。大きな盗みをやらかしているのもいるけど、本家に匹敵するようなスケールの大きさやロマンは皆無。いい女を抱き、享楽的な日々を過ごし、フィアットやベンツSSKを乗り回すというスタイルを真似ているだけのパチモンばかり。
 そんな中に現れた、緑のジャケットをまとったルパン三世……その正体は、中野のまずいラーメン屋のアルバイトと、スリで生計を立てているフリーター・ヤスオ(CVはラーメンズの片桐。そしてこの名前はルパンのオリジンCVである故・山田康夫氏からのもじりらしい)。店に忘れられていた緑のジャケットと、偶然スリ盗ったワルサーP38を手にした瞬間から、彼も「ルパン三世」としての生き方を手に入れる。
 ただ違っていたのは、彼が「本物の資質」を持っていたこと。次元も五右衛門も不二子も、「本物じゃない」と解っていても「本物のルパン」の魂を感じて行動を共にする。そして赤いジャケットをまとった本物さえもが「お前は本物になれるのか?」と勝負を挑むべく動き出す(本編を見ているとわかるのだけど、ヤスオが緑のジャケットとワルサーP38を手にするよう仕向けたのが当のルパンくさい)。

■ヤスオ以外にも、日常のしがらみや己の限界に苦悩しあがく二人のニセルパンのエピソードをクロスさせつつ描かれるのは、怪盗や悪漢なんていう存在が生きられない、息苦しい現代を生きる若き世代に、「お前はルパン三世のように生きられるか?」と挑発し、乗り越えるべき壁として立ちはだかるルパンという名の幻想……「今」だからこそ成立しうる『ルパン三世』の物語であると同時に、今の世代の青春譚でもある。『GREEN VS RED』は、それ自体が『ルパン三世』かくあるべしというしがらみを打ち破るべく生まれた、新生『ルパン三世』なのだ。

■ストーリー的なことはさておき、全編に盛り込まれた歴代『ルパン三世』へのオマージュも楽しい見所でした。警察のデータベースに存在するニセルパンたちが全シリーズそれぞれのデザインを踏襲したルパンだったり、主題歌が今井美樹カヴァーの「炎のたからもの」だったり(バックに流れるオープニング映像も、ある意味『カリオストロの城』的。さらに劇中のSEとしてオリジナルも少し流れます)。
 その反面、軽いショックだったのが銭形の声……納谷五郎氏の声が本当に老け込んでしまっていて、最初聞いた瞬間「いつの間にキャスト交代したの?」と思うぐらい、張りや力が無くて。クライマックスでは何とか調子を取り戻されていたけど、年齢的にも、そろそろやばいんだろうか……お体に気をつけてがんばってほしいです。

■色々とつらつら書いてきましたが、ひさびさにいいアニメを見たなという充実感が味わえた一編でした。内容的には突っ込みたいところもあるし、賛否両論もあるかとは思うけど、少しでも『ルパン三世』に思い入れのある人なら、絶対に見ておくべき一本だと思います。そして、自分の中の『ルパン三世』と向き合ってみるのも、面白いんじゃないだろうか。

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