ネットゲーム時代のゲームセンターのあり方とは? -『アイドルマスター』不正プレイヤー問題に思う-
昨年後半の更新が滞った大きな理由の一つが、ナムコの『アイドルマスター』にはまったせいでした(^_^;)。そのかいもあってか、春香と雪歩以外の全キャラでトゥルーエンドを見られたので、そろそろ引退かあ……と思っていたのですが、そんなところに飛び込んできたのが、不正プレイヤーのランキング削除というオフィシャルサイドの処置告知でした。
2006.03.08
プロデューサーの全国ランキング掲載につきまして
日頃より『アイドルマスター』をご愛顧頂きましてありがとうございます。
2006年3月7日、弊社側で不正なゲームプレイと認められる行為を繰り返していた、ユーザー様に対して、以降対象ユーザー様のユニットはランキングには掲載されない措置をとらさせて頂きました。
ゲームプレイに関しては特に影響はございません。
今回は主に、カードのレストア回数が通常のプレイではあり得ない回数行われているプロデューサー様に対しての措置とさせて頂きます。
なお、レストア回数などは全て把握しております。
今回の措置以前にも、何度か不正なプレイであると認められたカードに対して、同様の措置はとらさせて頂いておりますが、あえて不正なプレイには措置を行っている、ということを公表することで、プレイヤー様の良識による自浄を期待しております。
もちろん、場合によっては、より大きな介入も行います。
アイドルマスターは様々な遊び方が可能なシステムが故に、様々なプレイが波紋を呼んでいるようです。
プロジェクトでは想定できないような、プレイもあります。
しかし、プレイヤー様が介入することにより、アイドルマスターは完成します。
お腹立ちなこともあるとは思いますが、可能な限り対処は行っていこうと思います。
今後ともアイドルマスターをよろしくお願いいたします。
文責・ディレ1ことディレクターその1石原
『アイドルマスター』をプレイしている人ならわかると思いますが、全国ランキングのトップクラスあたりにはSランク・ファン数300万人なんていうアイドルがごろごろしています。これを実現するにはどういうプレイが必要なのか計算してみると……。
・アイドル引退までにオーディションに費やせるプレイ回数……59~61回
・Sランクの必須条件である特別オーディション全合格のためには最低9回のプレイが必要なので、通常オーディションに費やせるプレイ回数……50~52回
・特別オーディション全合格で得られるファン数……44万人
・300万人達成のため、残り256万人を通常プレイ回数で達成するために必要な一回あたりのファン獲得数……49230~51200人
実際にはオーディション合格時の成績やアイドルのレベルによって、獲得ファン数に補正がかかるのでもうちょっと余裕がある計算になりますが、オーディションを有利に運ぶために必要な「想い出」獲得のために何回かは「レッスン→コミュニケーション」をこなさなければならないことを考えると、プレイのほとんどを難度の高い「全国5万人オーディション」に費やして全勝しないと300万人達成はほぼ不可能な成績なわけです。
これを実現するための数少ない手段が、ネットワーク上での対人対戦がまったく無く、対戦NPCのレベルもプレイヤーのアイドルに合わせて設定される「オフラインモード」でのプレイ。ゲームセンター側がネットワークから切り離した筐体を用意したり、ナムコのサーバーの大規模メンテナンスや回線トラブルでもない限りはお目にかかれないモードな上に、『アイドルマスター』が話題になり始めた頃から「ゲームセンターの店員が閉店後にただでプレイしまくってレベル上げしている」という話もよく聞いていたので、まあ以下のような感じだろうとは思っていたんですよ。
・午前0時……風営法によりたいていのゲームセンターはこの時間に閉店。
・午前0~2時……一般プレイヤーはほとんどいない&サーバー自体はまだ稼働中なので、ここの時間帯で特別オーディションをクリア。
・午前2時以降……サーバー切断により、強制的にオフラインモードに。ここで全国5万人をプレイしてファン数を稼ぐ
正直不公平だよなとは思いつつも、ファン数を稼ぐことよりも育成過程でのアイドルたちへの思い入れこそ『アイドルマスター』の醍醐味と思っていたので、「そこまで必死になって楽しいのか?」とあまり気にしてはいませんでした。上野の某店では一般プレイヤーでも上記の深夜プレイが可能だったので、徹夜仕事になったときなどに何度かプレイしてみたけど、自分のようなキャラ萌え系のプレイヤーだと数稼ぎに終始しがちなオフラインプレイは全然楽しくないんですわ(実際、年末年始におこなわれたトーナメントも苦痛の方が大きかったし)。
でも、今回のオフィシャル措置の中で出てきた「リストア」という言葉。いったい何のことかと「アイドルマスター リストア」でググってみたところ、カードのデータが壊れた場合などに筐体に特殊な操作をしてデータを巻き戻すという行為らしいと判明。つまりゲームセンターの店員が上記のような閉店プレイをした場合、有利な無料プレイだけでなくオーディション不合格などの不利な結果が出た場合にリセットをかけることもできたということ。
閉店後のプレイだけなら役得ということで許容も出来るけど、これは明らかにやりすぎだろう。なにより問題なのはこの行為が『アイドルマスター』というゲームおよびコンテンツにおよぼす影響だ。
キャラ萌えなプレイをしていても、やっぱり自分のアイドルがたくさんのファンを獲得していくのは嬉しいし、それが全国ランキングで確かな形となって表れれば嬉しさ倍増だ。でも、役得や不正によってファン数を稼ぎまくるプレイヤーによって、あまりに圧倒的な数でランキング上位を独占されてしまったらどうなるか? 「どうがんばっても勝てそうにない→プレイ料金も高いし、お気に入りのキャラをクリアできたからもうプレイしなくていいや」と一般プレイヤーの遊ぶモチベーションを奪い、インカム低下→筐体撤去→『アイドルマスター』自体の人気低下という負のスパイラルを招くことになるのだ。なまじ全国で繋がっているネットゲームなだけに、その影響は店舗単位ではなく全国レベルで波及する。実際、他のゲームは盛況なのに『アイドルマスター』だけ閑古鳥が鳴いているゲームセンターは珍しくなく、撤去に踏み切るところも出始めている。不正プレイヤーが本当にゲームセンターの店員だとすれば、自らの手でインカムを稼げるゲームを潰して損害を与えるという笑えない事態を生み出しているわけだ。今回の不正プレイの温床がゲームセンターの店員にあったとしたら、ゲームセンター側はネットゲームの影響力を考えた上で、店員に対する教育やモラルの徹底を再考すべきだと思う。
今回、ナムコ側はプレイヤーの呼び戻しと拡大を優先して「不正プレイヤーはランキング削除」という寛大な処置で事を収めているが、それによって再びプレイに情熱を燃やして戻ってくるプレイヤーはどれだけいるのだろうか? 一部のプレイヤーの私欲のために、『アイドルマスター』が失ったものは、あまりに大きかったのかも知れない。